種牡馬リアルスティールを考える
先日、ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを制しました。日本馬におけるBC制覇はこれが初めてとなりました。その直後にマルシュロレーヌがBCディスタフを制し、本年BCの古馬牝馬は芝・ダートともに日本馬が制するという歴史的な日となりました。
今回紹介するリアルスティールは、そのラヴズオンリーユーの全兄にあたります。ラヴズオンリーユーが米国G1を制する5年前の2016年、同じく矢作厩舎に所属し、ドバイターフ(芝1800mG1)を制しているのがリアルスティールです。
ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを制した今、さらに注目されるであろう種牡馬リアルスティールを改めて考えていきたいと思います。
過去にも1度分析を行っており、過去の内容を再掲する部分を、改訂・アップグレードしている部分がございますので、ご了承ください。
リアルスティールの現役時代
リアルスティールは2014年から2018年の4年間で17戦し、4勝を挙げています。2016年のドバイターフ(G1-芝1800m)、2017年の毎日王冠(G2-芝1800m)、2015年の共同通信杯(G3-芝1800m)を制しています。いずれも左回りの直線の長い大箱コースでの勝利となっています。
3歳クラシック路線では、皐月賞2着、日本ダービー4着、菊花賞2着の好成績を収めています。勝った馬がドゥラメンテとキタサンブラックであることを考えると、世代が違えば異なった結果になっていたかもしれません。
4歳時には天皇賞秋を2着に好走していますが、この時の勝ち馬はモーリス(国内外のG1を6勝)です。
同期にはキタサンブラック(G1-7勝)、シュヴァルグラン、ドゥラメンテ(クラシック2冠)、サトノクラウンがいます。牝馬ではミッキークイーン、レッツゴードンキ、クイーンズリング、ルージュバックがいます。
現役時代はスタートが良く、ペースにあわせて中団前後に位置するケースが多い競走馬でした。強力なライバルがいたため、勝ち星は少ないながら、どの位置からでも良い脚を使って馬券内に入ってくる馬でした。(17戦中、3着以内11回。上がり上位3位内も11回)
G1勝ちがドバイターフのみであること、重賞勝利が非根幹距離の1800mであることを考えると、日本の高速馬場に特化した競走馬というより、スタミナとスピードを兼ね備えた欧州的な要素を持つ競走馬と考えられます。
リアルスティールの血統表分析
リアルスティールはディープインパクト産駒で、Miesque牝系の出です。3代母Miesqueの産駒には名種牡馬Kingmamboがおり、世界各地で活躍馬を出しています。日本ではキングカメハメハが日本競馬に大きな影響を与えました。エルコンドルパサーが長生きであれば、さらにその血の影響は広がっていたでしょう。リアルスティールの2代母MonevassiaはそのKingmamboと全きょうだいにあたります。
リアルスティールはディープインパクト×Stom Catという配合で、その配合はスーパーニックスとして有名です。同じ組み合わせのG1馬にはキズナ・サトノアラジン・エイシンヒカリ・ダノンキングリーなどがいます。ラヴズオンリーユーもリアルスティールの全妹ですから、これに当てはまります。特筆すべきは、この配合で種牡馬入りした前述の3頭はいずれも種牡馬としてうまくいっているという点です。父になっても効果的な血であることがわかります。
ディープインパクト×Stom Catの魅力は、Secretariat≒Sir Gaylordのニアリークロスが根っこにあり、そのうえでAlzao≒Stom Catが成り立っている部分にあるのではないかと思います。
柔らかく素軽い日本適正の高いスピード要素と、米国的なパワーと前向きさをこのニックスで入れていくことができると考えられます。一方、牡馬は年を取ってくると、米国的な要素が強まり、筋肉質なマイラーになっていくのだと考えられます。
リアルスティールはそこに欧州的なスタミナとタフさを持つMiesqueの血が入ったことで、菊花賞を走るスタミナや、ドバイターフを勝つ持続力を持てたのだと推測します。
種牡馬としてのリアルスティール
種牡馬リアルスティールを考えたとき、注目すべきは祖母MonevassiaがKingmamboと全きょうだいにあたることでしょう。この点から、キングカメハメハの血を引く馬は注目したいところです。
母父キングカメハメハの場合はMonevassia=Kingmamboの3×3、母母父キングカメハメハの場合は同3×4となり、やや濃いものの、昨今のサンデーサイレンスのクロスを見ても現実的なラインで落ち着きます。
ただ、キングカメハメハの血と相性が良い種牡馬は多数おり、リアルスティールの配合相手として有効活用するケースはあまり多くないのではないかと思います。
どちらかというと、Monevassiaをキングカメハメハ的な要素として扱い、その血を生かす配合の産駒が多く出てきて、活躍するのではないかと考えられます。その発想でいうと、Nureyev≒Sadler’s Wellsのニアリークロスを活用するパターンです。
Nureyev≒Sadler’s Wellの3/4同血クロスを活用することで、スタミナと頑強さを補うことができると考えられます。リアルスティールはスピード的な競走馬では決してないため、スピード的な要素を補っていきたいという側面はありつつも、このクロスを発生させることで、中山や阪神内回りなど力強さが必要なコースで活躍する力を得られると考えられます。
Nureyev≒Sadler’s Wellのニアリークロスを発生させる場合は、サンデーサイレンスやHaloのクロスやニアリークロスを持つ配合かどうかも注目したいところです。そのクロスがあることで柔らかいスピードとパワーの両方を強化することにつながるため、重要な要素です。中団で脚を貯めて、一気に加速して差し切り産駒が出てきそうなイメージです。
もしくは、Bold Ruler系の米血やUnbridled’s SongなどのFappiano系のスピードタイプのMr.Prospectorの血を持つと、先行脚質のスピードを最後まで持続するような走りをする産駒が期待できそうです。
いずれにしても、スピード感のある血を入れることがリアルスティール産駒成功のポイントになるのではないかと思います。
また、リアルスティールはダート路線でも活躍する産駒を出せるのではないかと推測しています。キングカメハメハがダート中距離で活躍する産駒を多数出せたのは、Mr.ProspectorとNureyevの血を引くからであり、そこで発生するNashua≒Nantallahのニアリークロスが米国的なパワフルさを引き出すことに由来すると考えられます。
リアルスティールに、Roberto系の血を引く牝馬と配合すると、望田潤さんがおっしゃっている砂のトライアングルが発生します。(Nashua≒Nantallahのニアリークロス)
これが発生すると、米国的な要素を産駒に伝える可能性が高まるため、ダート適正が高まると考えられます。リアルスティールも1800mを得意としたように、Robertoが入ればダート1800mあたりで活躍できる可能性は高そうです。
Robertoが入らずとも、Nashua≒Nantallahのニアリークロスはリアルスティール時点で入っており、クロフネなどの米国的なNorthen Dancer系の血を持つ馬や、米国短距離ダートタイプの種牡馬が入るとダートをこなせそうです。ただ、本質的には芝馬ですので、砂の一流血統とぶつかるとそちらに軍配が上がる可能性は高そうです。古馬になって苦戦するでしょうね。
ただし、Roberto系であっても、シンボリクリスエスは柔らかい血とSeattle Slewが入ることから、芝で活躍するスピードを持つ馬が出る可能性も高く、それは別枠でとらえたほうが良さそうです。
リアルスティールはAlzao・Stom Cat・Nureyevを通してNorthen Dancerの血を引くため、非Northen Dancerの血で緩和を促すことができると良さそうです。
まとめ
リアルスティール産駒のねらい目
- Nureyev≒Sadler’s Wellのニアリークロス+スピード強化血統のある配合(かつ牝馬が良さそう)
- Monevassia=Kingmamboの全きょうだいクロスのある配合
- Roberto系との配合からはダート路線の馬も期待できそう。シンボリクリスエス経由は芝で注目。
上記に該当するおもしろそうなは馬はざっとみたところ以下の5頭を見つけることができました。
アイムユアーズの2020 ベルスリーブの2020 マザーウェルの2020 リアリサトリスの2020 ロザリンドの2020
活躍に期待したいと思います。