種牡馬 シルバーステートを考える
本記事では、種牡馬シルバーステートについて分析します。
シルバーステートは2013年にノーザンファームで生産された競走馬で、2017年に現役を引退しています。
故障もあって重賞を勝つことはありませんでしたが、条件戦での圧倒的なパフォーマンスから、優駿スタリオンステーションで種牡馬入りしています。
故障がなければ、G1を勝っていて不思議はない底知れぬ能力と、受胎条件80万円という種付け料もあって初年度から大きな人気を集め、200頭弱の繁殖を集めました。
その初年度産駒から3頭の重賞馬を出し、種付け料は一気に飛躍し、2023年は600万円まで伸びました。
先日、優駿スタリオンステーションより発表された2025年の種付け料は500万円と、依然として高い評価を得ています。
シルバーステートはノーザンファームで生産された競走馬であったこと、そして現在の所属が優駿スタリオンステーションということもあり、社台系のクラブ、日高のクラブその両方で産駒が募集されていることが特徴です。
私も、2024年度募集においてシルクHCで募集されたトロシュナの23に出資していますが、生産はノーザンファームです。
1巡目で成果で残したことで、今後さらなる成果が見込むことができ、かつ様々なクラブで出資機会を得られそうですから、ここで改めて分析したいと思います。
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種牡馬分析 注意書き
本分析は私シオノゴハンが一口馬主として競走馬に出資しており、出資申込先を選ぶための分析を公開したものです。
そのため、種牡馬の活躍を保証するものではございません。
出資などの最終判断は、ご自身にて実施をお願いいたします。
ご了承くださいますようお願いいたします。
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シルバーステートの現役時代や背景
前述の通り、シルバーステートは2013年にノーザンファームで生産され、G1サラブレッドクラブ所属で2017年まで競走馬として活躍しました。
シルバーステートの背景情報の整理
- シルバーステート
- 父:ディープインパクト
- ディープインパクトの6世代目産駒
- 母:シルヴァースカヤ
- 母の父:Silver Hawk(Roberto系)
- 母は仏G3を2勝
- 生年月日:2013年5月2日
- 同世代の競走馬
- サトノダイヤモンド
- ゴールドドリーム
- ファインニードル
- 同世代の競走馬
- 生産:ノーザンファーム
- 所属情報
- 馬主:G1サラブレッドクラブ
- 厩舎:栗東 藤原英昭厩舎
- 父:ディープインパクト
シルバーステートは大種牡馬ディープインパクトの6世代目の産駒です。
2013年産のシルバーステートが種付けされたのは2012年。その前年にあたる2011年は、ディープインパクトの初年度産駒がクラシック世代に該当し、マルセリーナが桜花賞を勝利、リアルインパクトが古馬に交じっての安田記念を勝利しました。12月の阪神JFもジョワドヴィーヴルが勝利し、わずか2世代で種牡馬リーディング4位に入る大活躍を見せました。
そして2012年はジェンティルドンナが牝馬三冠とジャパンカップを勝利するなどし、ディープインパクトはリーディング1位を獲得。以降長らくその座を譲ることはありませんでした。
このようにシルバーステートは、種牡馬としてもディープインパクトが成果を残したところで生産されたことがわかります。
シルバーステートは故障もあってクラシックに出走していませんが、この世代の皐月賞馬はディーマジェスティ、日本ダービーはマカヒキ、菊花賞はサトノダイヤモンドで、いずれもディープインパクト産駒です。
ディープインパクトが種牡馬として圧倒的な存在感を示していたことがわかります。
シルバーステートの母シルヴァースカヤはフランスの重賞を2勝した競走馬で、母としてもG1馬Sevilleを出しているなど、期待の繁殖。近親にも日本で重賞を勝ったシックスセンスがいました。
こうした背景もあって、シルバーステートの募集価格は1億円と、期待された価格でした。
シルバーステートの競走成績
シルバーステートは通算5戦して4勝。
新馬戦は2着に敗れていますが、勝ち馬は後にG1競走ヴィクトリアマイルを勝つアドマイヤリードでした。
未勝利、条件戦を圧倒的なパフォーマンスで制し、クラシックでの活躍を期待されるものの、屈腱炎で離脱。
クラシックへの出走がかなわず、復帰は古馬になってからとなりました。
古馬での2戦も他を圧倒する勝ちっぷりでしたが、再び屈腱炎を発症、引退となっています。
シルバーステートは、先行して前目から押し切る競馬を得意としていました。
それを実現するポイントとして、以下の3点があげられると思います。
- 加速力、馬力がある。
- 折り合いがつく。
- スピード能力の絶対値が高い。
シルバーステートのレースを見ていると、ゲートが速くて先行できるというより、ゲートを出てからの加速が速くて先行できていることがわかります。
この様子から馬力の強さが伺えますし、ポジションを確保するうえでその能力を存分に生かしていたことがわかります。
また、この馬力はコーナリングと直線での末脚でも発揮されていることがわかります。
それがわかりやすいのが3戦目の紫菊賞で、最内の狭いところで加速しながらコーナーをこなし、内回りの短い直線で他の馬を置いていきました。直線でのピッチの速さは衝撃的で、機動力、馬力のすごさが伝わるレースでした。
シルバーステートはゲートから素早く加速し、良いポジションをとれますが、そこからの折り合いも抜群です。
これは主戦を務められた福永騎手(現調教師)の手腕も大きいと思いますが、勢いそのままに走ってしまうことなく、落ち着いたペースで道中を進めることができています。
操作性の高い身体的能力と、それを制御できる精神的安定感の両立ができていたのがシルバーステートだと考えられます。
そのうえで、スピード能力の絶対値の高さも忘れずにあげておきたい要素です。
加速力や機動力、それを生かす気性があっても、トップスピードが低ければ成果を残すことは難しいでしょう。
シルバーステートは走破タイムや上がり3fの時計が示すように、トップスピードも高いことも大きな魅力です。
競馬の質から見ていくと、シルバーステートは直線の短く、機動力が求められるコースに適性が向くのではないかと思います。
一方で、京都の外回りでも成果を残しているように、加速力とトップスピードを生かした先行押切の競馬を大箱でも披露しています。これは能力の絶対値の高さで成せたことではないかと思います。
もし健康であれば、皐月賞や大阪杯、宝塚記念などの舞台で成果を残していたのではないかと思います。
シルバーステートの血統分析
- 母系の持つ力強さと母の競走実績
- RobertoとNiniskiによる北米の力強さの増強
- 母が仏で2,400mと2,500mの重賞を勝利
シルバーステートの母、シルヴァースカヤはフランスで重賞を2勝した競走馬です。
フランスで活躍していますが、その血統には、北米の力強さの要素がかなり入っています。
注目したいのは、RobertoとNiniskiです。
RobertoはSir GallahadとBull Dogの全兄弟クロスを持ちますが、これはTeddy系(テディ系)の血であり、いわゆる北米の力強さ、馬力や前向きな気性のもとになる要素です。
そして、NiniskiもSir GallahadとBull Dogの全兄弟クロスを持っており、この2頭が出会うと、北米の力強さの要素が強調されます。
また、RobertoはNashuaの血を引き、NiniskiはNantallahの血を引きます。
NashuaとNantallahは父がNasrullahで共通、母系にSir Gallahadの血を引くことなどが共通し、この要素を持つと、Nasrullah系のスピード要素とTeddy系の力強さを強化するイメージです。
Nashua≒Nantallahは現在の日本競馬でも大きな成果を残しており、ダートで活躍したゴールドドリームやクリソベリルもこの要素を持っています。
シルバーステートの4代父はHail to Reasonで、これはRobertoの父と共通します。
Hail to Reasonもまた母系にTeddy系の血を引いており、シルバーステートの血統においてHail to Reasonのクロスが発生すると、その他の北米パワー要素とも相互作用して、力強さが発揮されます。
これらの要素が絡み合うことで、シルバーステートは北米の馬力や前向きな気性由来の馬力や機動力を受け継ぎ、高いパフォーマンスを発揮したと考えられます。
そのうえで、コントロールが効く競走馬ったのは、母シルヴァースカヤの資質による部分があるのではないかと考えられます。
前述の通り、母シルヴァースカヤはフランスで重賞を2勝した競走馬で、その距離は2,400mと2,500mです。
フランスの競馬は直線まで我慢して、末脚勝負となることが多く、我慢できることは勝利するうえで重要な要素となります。
そうした舞台で成果を残した母の気性的な要素も、シルバーステートにつながったのだと考えられます。
レースのイメージからも、Roberto系、北米の力強さの要素を強く受けた競走馬であり、ディープインパクト産駒としては珍しいタイプであると言えます。
種牡馬シルバーステートのポイント
シルバーステートは前述の通り、Roberto的な要素、力強く小回りのコースで力を発揮する要素を受け継いだ競走馬でした。
それを能力の絶対値の高さで大箱でも成果を残していたイメージで、産駒にもそれは伝わっています。
シルバーステート産駒で重賞を制した馬は2024年12月15日時点で4頭。
- ウォーターナビレラ(19年産・母の父キングヘイロー)
- ファンタジーS(G3) 阪神芝1,400m
- セイウンハーデス(19年産・母の父マンハッタンカフェ)
- 七夕賞(G3) 福島芝2,000m
- リカンカブール(19年産・母の父Zoffany)
- 中山金杯(G3) 中山芝2,000m
- エエヤン(20年産・母の父ティンバーカントリー)
- ニュージーランドT(G2) 中山芝1,600m
上記の通り、いずれも坂のある小回り、直線の短いコースです。
重賞馬に限らず、全体データで見ても、東京より中山、京都と阪神では外周りより内回りという傾向がはっきりと出ています。
この傾向からも、大箱で末脚を発揮する要素を強化するより、馬力が求められるコースで、瞬間的な加速力を発揮して勝ちに行く要素を強化した産駒をねらうのが良いでしょう。ただもちろん、バランスの考慮も大切です。
- Roberto系の要素を継続強化する
- Kingmambo系(Mr.Prospector+Special)の血を持つ
- Hail to Reasonのクロスを持つ(Roberto系・Halo系)
- 前駆強化の方向性で、北米の血を取り入れる
- 後躯強化の要素を取り入れる
- Lyphard系などフランス血統の取り入れ
- Danzig~デインヒルの後躯強化の取り入れ
このあたりは注目したいポイントです。
Roberto系の要素を継続強化する
画像を再掲しますが、シルバーステートのRoberto的な要素は、北米のテディ系の要素が由来しています。
このテディ系の要素を刺激しつつ、スピード能力を維持・向上させるうえで有効となるのが、Mr.Prospector+Specialの要素の取り入れです。
Mr.ProspectorはNashuaの血を持ち、SpecialはNantallahの血を持つため、この要素を取り入れることで、Nasrullahの速さとTeddyの力強さを継続的に強化することができます。
Kingmamboの系統、キングカメハメハの血はまさにこれに該当しますし、キングカメハメハの競走能力や日本の馬場適性を踏まえると、成果を期待するうえでぴったりな存在だと考えられます。
また、Hail to Reasonのクロスを発生させることも有効だと考えられます。
Hail to Reasonの父系Royal ChargerはNasrullahと3/4同じ血統構成であり、スピード要素を刺激しつつ、母系にTeddy系の血を持つので、シルバーステートの持つ要素を継続強化することができます。
Hail to Reasonの後継にはHaloとRobertoがおり、日本で探すことに困らない血です。
Robertoであれば直接的にこの要素を刺激することができるため、わかりやすいでしょう。
また、こうした観点から、サンデーサイレンスのクロスが発生することもマイナスにはならないと考えられます。
これら以外の要素で言えば、北米的な前向きな気性やパワーを持つ血も好相性となると考えられます。
A.P.Indy系の北米血統より、Storm Bird~Storm Catや、Alyderなどは力強さの要素も強いため、好相性だと考えられます。
後躯強化の要素を取り入れる
Roberto的な要素は前駆の力強さやスタミナ的な要素であり、シルバーステートがこの要素を産駒に伝えてくれるということを念頭に置くと、後躯で走る要素を母系から加えていくこともプラスに働くと考えられます。
後躯も強くなることで、早期から動けるようになることも期待でき、2歳戦からのハイパフォーマンスも期待ができるのではないかと思います。
後躯で走る要素を持つといえば、フランス血統です。
シルバーステートの父ディープインパクトは母系にフランス要素を持ちますし、母シルヴァースカヤもフランスで活躍した競走馬です。
Roberto的な要素に加えて、このフランス的な要素を持っていたことがシルバーステートの成果につながったことを考えれば、それを改めて取り入れることはプラスになると考えられます。
したがって、Lyphard系の血を取り入れることはプラスに働くと考えられます。
ダンシングブレーヴなどはHalo的な要素も持ちますから、好相性が期待できます。
後躯で走るという観点で言えば、トニービンの系統もそれに該当します。晩成傾向にはなってしまう要素ではありますが、例えばルーラーシップはキングカメハメハの血を持ちますし、他の要素を両立させることで良いとこどりできる可能性はあるでしょう。
その他だと、Danzig~デインヒルなど、後躯を強化する血を取り入れることもプラスでしょう。
具体例1.重賞馬に見る成功のポイント
ここまで整理したねらい目ポイントを踏まえて、実際の活躍馬から、具体的にポイントを見ていきたいと思います。
- ウォーターナビレラ(19年産・母の父キングヘイロー)
- ファンタジーS(G3) 阪神芝1,400m
- 母の父Lyphard系+Haloの血でHail to Reasonのクロス持ち
- 母系にRobertoの血を持ちクロスが発生
- ファンタジーS(G3) 阪神芝1,400m
- セイウンハーデス(19年産・母の父マンハッタンカフェ)
- 七夕賞(G3) 福島芝2,000m
- サンデーサイレンスのクロス(Hail to Reasonのクロス)
- 母系にSpecialの血を持つ
- Nijinskyのクロスで北米の力強さを強化
- 七夕賞(G3) 福島芝2,000m
- リカンカブール(19年産・母の父Zoffany)
- 中山金杯(G3) 中山芝2,000m
- 母の父Zoffanyはデインヒル系+母の父MachiavellianでMr.ProspectorとHaloを持つ
- 母系にNureyevを持ちSpecialの血を持つ
- 母系にNijinskyの血を持ち北米要素を強化
- 中山金杯(G3) 中山芝2,000m
- エエヤン(20年産・母の父ティンバーカントリー)
- ニュージーランドT(G2) 中山芝1,600m
- 母の父はWoodman系でMr.Prospector+Buckpasserで北米要素
- 母系はDanzig+Alyderで後躯強化+前駆強化の両輪
- ニュージーランドT(G2) 中山芝1,600m
推測と具体を行き来してポイントを整理していたため、当然ではあるのですが、ここまで示した要素を各馬が持っていることがわかります。
Roberto的な要素の強化と後躯強化、この2点に注目して出資馬を選ぶことで、成果が期待できるのではないでしょうか。
また、まだデビュー1戦のみですが、大器が期待されるキングノジョーもまた要素が一致しています。
キングノジョーは母の父がRoyal Anthemで、NureyevとHail to Reasonの血を引きます。
加えて、母系にはRobertoの血を引いており、Robertoのクロスを持ちます。
成功のポイントを押さえていると思いますし、パレスルーマーの仔ですから、早期から走ることができ、同時に古馬になってもうひと伸びしてくれそうですね。
2025年の年始に京成杯で重賞挑戦を予定しており、そこで成果を残して皐月賞に臨んでくれると楽しみです。
具体例2.シルクHC出資馬トロシュナの23
私がシルクで出資したトロシュナの23です。
まだデビュー前ですが、個人的に大いに期待しています。
母の父スクリーンヒーローより、Silver Hawkとサンデーサイレンスのクロスを持つため、Roberto的な要素や北米の力強さの要素は十分に強化できていると思います。
また、母系にMr.Prospector+Specialの血を持っており、Roberto的な要素はそこでも強化することができています。
クロスが濃いのが若干心配な要素ではあるのですが、配合的には活躍が期待できるのではないかと思っています。
今時点で小柄ですし、ここからすごく大きくはならないのではないかと思っています。小柄でもピッチを生かした走法で走ってくれれば配合イメージとあいますし、故障リスク的にもやや小さいくらいの方が良いのではないか、と思っています。
美浦の大竹先生の厩舎所属ですし、中山や福島で活躍してくれることを期待しています。
まとめ シルバーステート産駒のポイント整理
- Roberto系の要素を継続強化する
- Kingmambo系(Mr.Prospector+Special)の血を持つ
- Hail to Reasonのクロスを持つ(Roberto系・Halo系)
- 前駆強化の方向性で、北米の血を取り入れる
- 後躯強化の要素を取り入れる
- Lyphard系などフランス血統の取り入れ
- Danzig~デインヒルの後躯強化の取り入れ
最後に改めて要素を整理してみました。
すでに成果を残している種牡馬ですし、今後さらなる活躍が期待される種牡馬です。
2024年の朝日杯でも産駒のランスオブカオスが3着に入りました。
収得賞金額的にここから積んでいく必要がありますが、京都の外回りでこの走りをできるのですから、クラシックに参戦できるようであれば、皐月賞で楽しみな存在ではないでしょうか。
ランスオブカオスも、Specialの血(Sadler’s WellsとNureyev)・Haloクロス・Nijinsky・Alyderで要素を満たしていますね。
今後もシルバーステート産駒の活躍が楽しみです。
引き続きよろしくお願いいたします。